【読書レビュー】消えない月/畑野智美

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書店に行ったときに文庫版が販売されていて、今年読んでおきたい本リストに追加していた小説でした。

読み始めると次が気になってどんどんページを進めてしまう、そんな一冊です。

8月の暑い日に、ぞくぞくする物語をお探しの方、おすすめです!(ホラーではありませんw)

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目次

「消えない月」あらすじ

主人公の河口さくらは、東京・世田谷にある「福々堂」のマッサージ師。

さくらには、いつも自分を指名してくれる松原という客がいた。

お客様と「そういう関係」になってはいけないと分かってはいたが、松原からの急なアプローチに関係は急発展。

交際を始めることになったが、良かったのは最初だけ。

徐々に松原の支配欲や利己的な考えについていけず、別れを切り出した。

ところが、さくらの別れには応じようとせず、松原はしつこく連絡をとろうとしてくる。

しばらく無視を決め込んでいたさくらだったが…。

「消えない月」はこんな人におすすめ

  • ゾクゾクするストーリーを読みたい人
  • 当事者視点で描かれる小説が好きな人
  • 暗いストーリーを読むことが苦痛ではない人
  • リアリティのある小説が読みたい人

「消えない月」おすすめポイント

あらすじでなんとなくお察しかもしれませんが、「消えない月」は元交際相手にストーカー行為を受ける女性が主人公です。

この小説の面白いところは、章が変わるごとに、ストーカー被害者のさくら目線と加害者の松原の視点が切り替わり物語が進んでいくところ。

それぞれの目線で描かれているストーリーは、客観的に見ると一本につながっている一連の流れのはずなのに、チグハグに見えてなんとも不気味です。

正直、ハッピーエンドで終わるとは言えないですし、内容的にも気持ちよく読める内容ではありません。

「怖い」と思うシーンも多いので暗い内容を読むのが苦手な方は控えた方が良いです。

でも、さくらと松原の心理がとても興味深く、先が気になって気になって一気に読み切ってしまいたくなる、引き込まれる小説です。

「消えない月」読後レビュー

「リアル」な恐怖

仕事と育児が忙しくて、このタイミングでちょっと分厚い本を読み始めるのはな…と思いながらページをめくっていたのですが、2割ほど読んだ頃にはページをめくる手が止まらず、隙を見ては本を開き、読み切ってしまいました。

派手な展開はそんなにないですし、序盤はいわゆる「よくある」「普通の」男女の出会いなんです。

主人公のさくら目線で物語は始まり、新たな恋の始まりに微笑ましくもあるのです。

しかし、2章に変わるとその微笑ましさは崩れおち、ストーカー加害者である松原の狂気がつきまといます。

いわゆるモラハラ気質とも取れる松原の性格。

そのあまりにも身勝手・利己的な考え方は、決して共感できるものではないのですが、ファンタジーでもなんでもなく、とてつもなくリアルな不気味さでした。

「自分には理解しがたい他人の感情」が文章を通して伝わってきて、松原という人間に拒絶感すら覚えます。

でも、自分にはわからない感情だからこそ、気になってしまう。

松原の心理描写に不気味さを覚えつつ、ついつい先を見たくなってしまいました。

洗脳されたストーカー被害者

被害者のさくらの行動は、正直言うとイライラしてしまうところもあります。

客観的に見ていると、「それはどう考えても悪手でしょ!」と突っ込んでしまいたくなりますし、周囲の心配や気遣いを無碍にしているのでは?と感じることもありました。

ただ、これは正常な思考回路をもってすればさくらも気づけたことであって、ストーカー被害・モラハラ被害による一種の洗脳状態に陥ってしまっているのだとも感じました。

端からどれほど「〇〇しないほうがいい」とか、いろんな助言をしたとしても、洗脳された相手には届かない。

さくらの周りも、多くの人がさくらに助言をしますが、ここぞというときのさくらの行動にもどかしい思いをしました。

周囲の人々との関わり

さくらがマッサージ師として働いている「福々堂」の従業員や、家族とのやりとりが物語の中で多く出てきます。

日常会話なので、特段大きな盛り上がりを見せるというわけではないものの、それぞれの登場人物のセリフに隠れた心情などを考えるのは非常に面白かったです。

とくに、さくらと一緒に福々堂で働いていた木崎さんという女性。

さくらと年齢が近いこともあり、仕事の合間に話すことも多く、物語の中でも割と頻繁に出てきます。

一見仲がよさそうに見える二人なのですが、ただ仲がいいとは言い切れない不穏さ、というか、言葉の節々に小さな棘のようなものがちらつくんですよね。

物語が進むにつれ、序盤では見えなかった背景なども見えてきて、松原以外の登場人物とのコミュニケーションも、非常に面白く読むことができました。

まとめ

ラストは結構衝撃的。

小説としては私はとても面白かったのですが、内容が内容だけに万人におすすめできるとは言い難いです。

小説の物語の中に感情移入しすぎて落ち込んでしまう人や不安になってしまう人は、読むのを控えた方がいいかもしれません。

でも、物語として楽しめるという方であれば、ぜひ読んでみていただきたいです!

ストーカー被害についてとてもリアルですし、ストーカー被害に遭ったときの対処なども記載されているので、知識として知っておくのも良いかと思います。

もちろん小説の内容が必ず正しい対処法、というわけにはいきませんし、相手によって対処方法が変わることもあるでしょうが、知っていて損はないなと感じました。

楽しく物語を読み進めていくうちに、新しい知識や考え方が少しだけ増えていく。

これだから、読書は楽しいんですよね!笑

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この記事を書いた人

主婦 兼 会社員。
PCに向かって絵を描いたり文字を書いたりするのが好きです。
趣味はカラオケとアニメ鑑賞。
カフェ巡りも好きです。

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