書店で表紙を見かけてずっと気になっていた喜多川康さんの「運転者」。
ずっと、気にはなっていたものの本を読むことから離れてしまっていて手つかずだったのですが、軽い気持ちでページをめくってみたら2日で一気読みしてしまうくらい面白かったので、ご紹介いたします!
「運転者」のあらすじ
主人公 修一は保険会社の営業マン。
担当先の保険が20件の大量解約が発生し、給料は激減のピンチ。
給料が減れば、妻が楽しみにしていたパリ旅行はキャンセルせざるを得ず、当然妻のご機嫌は急降下確実。
さらに、娘の不登校問題に、遠方の実家に住む高齢の母親のこと…。
「なんで、俺ばっかりこんな目に遭うんだよ」
そんなとき、一台のタクシーが修一の前に停まった――。
不思議なタクシーの運転手の連れ行くままに、修一の「運」を大きく変える場所を巡る不思議な旅。
その中で、修一の悩みは解消されるのか?
最後に修一が見つけた答えとは?
「運転者」はこんな人が読むべき!
- いま、辛いことが起きていて、生きることにしんどさを感じている人
- 自分の生き方を見つめなおしたい人。
- 「運がいい人」「運が悪い人」の違いって何か?の答えを探している人
- 自己啓発本に苦手意識がない人
- 読んだ後に前向きな気持ちに、すがすがしい気持ちになりたい人
「運転者」をおすすめするポイント
小説なのですが、内容としては「ストーリー仕立ての自己啓発本」という感覚が近いと思います。
小説が好きな方、かつ自己啓発本が苦手でない方にはぜひ読んでいただきたいです。
自己啓発の内容は大いに盛り込まれているのですが、私たちに直接語り掛けてくるわけではなく、修一と運転手の会話を通して気づきをもたらしてくれるような、そんな内容となっているので、お説教っぽくもならず、すっと頭に入ってきました。
また、ストーリーはフィクションですし、少しファンタジーチックなところがあるのですが、どこか起こり得そう…。
そんな現実と空想の狭間で起きている出来事に引き込まれていきます。
修一と、周囲の人々との様々なかかわりの中で、今まで自分の中になかった考え方に気づかせてくれる小説です。
「運転者」読後レビュー
運が良い人?悪い人?
私は、自分のことを運が悪い人間だと思ったことは一度もありません。
逆に、どちらかというと「運が良い人間」だと思っています。
別に辛いことや悲しいことが起きないわけではありません。
大失恋を経験して大号泣したことだってありますし、仕事でうまくいかなくて毎日枕を濡らした日々もあります。
それでも、運が悪いと思ったことはないです。
ちなみに、うちの主人は「俺はいつも運が悪い」と自称するタイプです。
運転中に赤信号に引っ掛かりまくると、「やっぱ俺ってツイてないな~」と苦笑交じりに言っています。
さて、「運が悪い人」「運が良い人」って本当にいるんでしょうか?
いるのだとしたら、その違いってどこから来るんでしょう?
生まれ持った天性?それとも…??
運転者は、なぜこの違いがあるのか?というところに、フォーカスを当ててくれています。
もちろん、思考、考え方に正解はないので、この小説に書かれていることがすべて正解だとは思いません。
違う考え方があっても、いいと思います。
でも、この小説のエッセンスを、少し自分の人生に加えることで、今よりもっと幸せになれる。そんな気がしました。
以下は、私の大好きなフレーズです。ノートに書き留めておきました。
「運が劇的に変わるとき、そんな場、というのが人生にはあるんですよ。
それを捕まえられるアンテナが、すべての人にあると思ってください。
そのアンテナの感度は、上機嫌のときに最大になるんです。
逆に機嫌が悪いと、アンテナは働かない。
最高の運気がやってきているのに、機嫌が悪いだけでアンテナがまったく働かないから、
すべての運が逃げていっちゃうんです。」
「運転者 未来を変える過去からの使者」 喜多川泰 著
私は、このフレーズにすごく納得しました。
だって、私の主人、すぐにイライラして機嫌が悪くなっちゃうんですもん。
「短気は損気」とはよく言ったものです。
では、上機嫌でいるって、どういうことでしょう。
ただ笑顔をつくってニコニコしていたらいい?そうじゃない。
本当の上機嫌って、どういうこと?
そんな答えを探している人に、読んでほしいんです。
世の中は、誰かが頑張る姿からもらったエネルギーの集合体
小説の中盤~後半からは、自分自身の考え方、生き方からさらに範囲を広げていきます。
自分がこの世界で生きている意味。それって、なんだろう。
「自分は人の役に立っているのかな?」「自分が、生きている意味はあるのかな?」
…そんな悩みや不安を払拭してくれる内容でした。
誰しも、一人では生きていけない。
他人の生き方が目に入るからこそ、自分がちっぽけに思えることだってある。
他人が自分の欲しいものを手に入れているのを目にすると「なんで自分は手に入らないんだろう…」そう妬んでしまうこともあるかもしれません。
でも、自分が生きていることには必ず意味があって、役割がある。
それは、巡り巡って、一人で生きていないからこそ、意味があると言えるのだと気づかせてくれます。
「運」は世代を超えて受け継がれていくもの
運転者はストーリーの中で、修一のお祖父さんの代まで遡ります。
修一のお祖父さんは第二次世界大戦の戦禍の中で戦い抜いた兵士でした。
お祖父さんが、後世に託したもの。後世の人間が受け継いだものとは、なんでしょう。
修一のお祖父さんだけではありません。
80年前、戦争で多くの人がなくなったこの日本で、今、少なくとも私たちが敵の空襲に怯えずに暮らせているのはなぜでしょう。
運が受け継がれ、そして次世代に引き継ぐために、自分たちは何をすればいいのでしょう。
ストーリーの後半からは、大号泣しながら読みました。
私たちは一人で立っているのではなく、多くの人に支えられて生きている。
そして、自分がどう生きていくか、少しだけ答えを見いだせたような気持ちで本は終盤に差し掛かります。
不思議なタクシーは色々な縁をたどって
運転者を最後まで読み終えた後、もう一度プロローグを読んでほしいのです。
「ああ、そうか」と納得すると同時に、世代を超えて受け継がれる運のゆくえを知ることができて、とても清々しい気持ちになります。
まとめ
私は、この本を読んでよかったと心から思いました。
もちろん、いろんな考え方があるので、この本の内容がすべて正しいと盲信する必要はありませんし、私も「ここは、自分の考え方とはちょっと違うかも?」と思う点はありました。
人によっては「こんなの、きれいごと書いてるだけじゃん」と思う方もいるのかな、と思います。
でも、少なからずこの本に書いていることは「後ろ向き」ではなく、「前を向いて進む人の背中を押してくれる」内容だと感じましたし、この考え方は、自分の生き方に取り入れたいと思うポイントもたくさんありました。
現代人が何の悩みもなく生きているわけではありません。
仕事、人間関係などは、もしかしたら戦時中の頃よりもずっとずっと複雑になっているかもしれませんね。
もし、今悩んでいて、「どうすればいいかわからない」と行き詰まっていたら、一度手に取って読んでみてほしいです。
この本が、悩みを解決してくれるわけではないけれど、悩んでいるあなたをほんの少しだけ楽にしてくれるかも。
重い足取りが、ちょっとだけ軽くなるかもしれませんよ。